2024年 B5判 カラー95頁、モノクロ86頁
編集・日本民藝館学芸部
金蒔絵師の次男として静岡市に生まれた鈴木繁男(1914―2003)は幼少期から漆芸を仕込まれ、模様を生む能力を育んでいました。その才能をいち早く認めた柳宗悦(1889―1961)は唯一の内弟子として1935年に鈴木を入門させます。柳から工藝や直観について厳しく教育され、開館前の日本民藝館陳列ケースや展示台への拭漆塗りなどもおこないました。鈴木の仕事が初めて衆目を集めたのは雑誌『工藝』の装幀で、和紙に漆で描かれたその表紙は多くの民藝運動の関係者や読者を驚かせたのです。その後、沖縄県・壺屋の素地に上絵を付けたことで始まった陶磁器制作は、愛媛県・砥部や愛知県・瀬戸本業窯などの伝統的な産地や、地元静岡県・磐田に築いたの窯で、彩り豊かな花を咲かせました。そして、各種の漆絵や樺細工、柳著作の装幀、名号などの文字、ポスターの意匠など、多岐な分野で優れた作品を残していきます。 鈴木作品の特質は筆や型を用いて施された模様の独自性でしょう。古今の工藝品から滋養分を受取り、それを十分に咀嚼して生んだ品格ある模様は、今も燦然たる光彩を放っています。また、柳に鍛えられた眼による創作も忘れてはなりません。鈴木が蒐めた古作の優品は当館のコレクションにも散見でき、それは、所蔵品の中で確かな位置を占めています。本書は没後20年の節目に合わせ、これまで認知されることの少なかった工藝家・鈴木繁男の手と眼による創作を提示し、約半世紀にわたる多彩な仕事を顕彰するものです。